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2014/09/19

年齢を重ねるごとに辛くなる?:『「若作りうつ」社会』(熊代亨著/講談社新書)

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ただでも世界中で心身ともども若く見られがちな日本の老若男女が、
なにげに陥っている「外見も心も若くいたい症候群」。

そんなことを思っていた矢先、
1975年生まれの若き!精神科医による
『「若作りうつ」社会』(熊代亨著/講談社新書)なる本を発見し読了。

戦前・戦中生まれで世間を長らく鳥瞰した大御所ではなく、
団塊Jr世代でありながらも石川県の漁村出身という精神科医の著作であったことが、
読み進めるうえで新鮮でした。

21世紀に入ってからというものの若手論客の多くは、
ニュータウンで育ち、しかもサラリーマン家庭出身だったりすることが多く、
議論を聞いたり読んだりしても「今ここ感」が強い。
また往々にして「己(おのれ)をとりまくコミュニケーションの強度」が
処世を語る上での価値基準だったりする。

SNSやブログ、ツイッターでの友達の数や記事へのコメントの数こそ
そういった価値基準のバロメーターと言っても過言ではない。

昨今、誰もが否定できないようなトレンドに真っ向から反旗をひるがえす著者。
もはや年長者が尊敬されず、
何歳になっても「かわいい」という言葉から離れることができないような「若さ至上主義」を批判しつつも、
結論として「年の取り方がわからないなら上下の世代と学び合おう」と主張しています。

今どき珍しいというか、
まさか日本の高度成長が終焉をむかえた1975年生まれの精神科医から、
村落共同体的な人間関係を賛美する発言を読むなんて思ってもみませんでした。

そういえば、心理学者でもある小沢健二の母上の本で
「社会保障を手厚くすればする程、世代間の紐帯を損ないかねない」
といった一文を読んだことがありますけど、
考え方のスタンスは同じですね。

じつのところ、
この著者のイイタイコトが通じるのは、
年長者しかも戦前・戦中生まれであるか、
農村部や旧市街地で育った人あたりかもしれないが、そう多くはないかと思う。

というのも、もはや、こうした本を読むタイプの戦後生まれの人は、
住む場所の都会・田舎に関係なく、SNSをはじめとするインターネットの世界にドップリはまっているパターンが大半。
趣味つながりでのコミュニケーションにいたっては年齢の上下関係なんてスルーするからこそ、
むしろ年長者が相手にしてもらっていることも多い。

とまれ、もはや年長者ですら年著者としてのふるまいがうまくできないでいる現状を指摘している点は注目すべきだろう。

かくいう自分自身、年齢が増すごとに若く見られることが多くなった。
時にはありがたく、時には考えさせられることも。
じつのところ「年齢相応に生きてますねえ」と言われるほうが、
人間として成長を認められた証なのになあと思うことしばし。

最後に、先日、某ブ○ク○フで滅多に足を運ばないマンガのコーナーを見てみたら……

昼の2時過ぎにもかかわらず、
不登校っぽい中高校生に混じって、
マンガの壁に向かって立ち読みにふけっている、
20代、30代そして40代と見紛う営業マンの姿が。

マンガそのものを読むことについては一切否定しないけど、
この本で嘆いている現実をかいま見た瞬間でもあった。

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