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2013/07/16

程よく脱力できた一冊:『親鸞』(石井ゆかり=著/井上博道 =写真)

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最近、読み終えた本のなかから一冊。

『親鸞』(石井ゆかり=著/井上博道 =写真)

著者は西洋占星術の記事を書いてらっしゃるようですが、
次のような一文で「ホンネ」を吐露されるところから、むしろ読む側の心が引きつけられます。

<人間には本来、「未来」や「結果」は、わかりようがない>

この本で語られる浄土真宗の開祖・親鸞については後ほど触れるとしまして、
「未来」や「結果」というキーワードで日本の仏教における開祖をイメージすると、
空海や日蓮の名がふと浮かんできました。

「金剛杖を突いたら泉が湧き出た」という治水伝説をはじめ数多くの超能力的な伝説が存在する空海。
「律宗の良観との雨乞いに勝つ」といった伝説のみならず、「我れ日本の柱とならん」という誓いを立てた日蓮。

今、日本の政治家に「こんな人がいたらなあ」と思っている人は跡を絶たないと思われますが(笑)、
占いにすがりつつ「悩む」人々の多くは、
空海や日蓮とまではいかなくても、
無意識に超人的な透視能力を持った人を求めていることでしょう。

なのに、<人間には本来、「未来」や「結果」は、わかりようがない>とホンネを吐露した
西洋占星術の記事を書く著者が選んだのは、親鸞です。

「ただひたすらに自己のはからいを捨てて阿弥陀如来の本願力を信じれば救われる」

と、とかく占いでは重用視される「この世での損得」とは一番縁遠いというか、
寺や神社に行って「○○ができますように」と人間の側の煩悩から仏や神への願い事をするご利益信仰とは正反対の教えです。

かの有名な『歎異抄』においても、
念仏の真意を訊ねてきた同朋に対し、

「自分は、ただ南無阿弥陀仏と念仏することだけを信じてきた。秘密の教えや経文なんてわからないし、もし知りたければ南都北嶺(奈良や比叡山)へ行って学僧に訊ねればよい。私は法然上人から教えていただいた念仏で、仮にだまされて地獄に堕ちても後悔しない」

と、まるで突き放すかのように諭しています。

なんだか……

「自分(自分達)だけが良い思いをしようと思うなよ」

と諭されている気分になるのは私だけでしょうか?

自己責任、新自由主義……etc、
今なお日本で広がりつつある政治的な空気感(これは政治的な与野党関係なく)もまた、
行き着く先は「バトル・ロワイアル」的なトーナメント戦社会かもしれません。
そう感じるからこそ、
占いに限らず「未来」や「結果」に答えを出してくれそうなマニュアルにすがりつくのが現代人の性。

なので「不思議=人間の理解や認識を超えている」としかいいようのない「念仏」の教えは、
親鸞や法然が生きた平安末期~鎌倉時代とは違った苦難の時代だからこそ、
信仰する/しないはさておき、触れてみる価値があると思わせてくれた一冊でした。

また、この本は写真によっても「自己のはからいを捨て」る気分にさせてくれます。
写真家(※)の思いをブックデザイナーが十分汲み取っているというか……
とてもおおらかなレイアウトとトリミングで世界に開放感があります。

読んで、見て、考えさせられて、程よく脱力できる。そんな読了感でありました。


(※)残念なことに、写真を撮られた井上博道氏は、
   この本が刊行された昨年12月、撮影中に転落し死去されました。


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