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2013/05/20

独自視点の旅は色褪せない:『異郷の景色 』西江雅之著

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何気なく古本屋で見つけて買った『異郷の景色 』(西江雅之著)。

著者は若干23歳ながら独学でスワヒリ語の文法を日本初のスワヒリ語の文法書をまとめたり、
早稲田大学で文化人類学の教鞭を執った人ですが……

1979年初版なのに過去の旅紀行を読まされている感じがしなくて、
とても楽しく読ませてもらった一冊です。

文体も約物(記号類)が極めてシンプル。
句読点以外は会話の部分もカギカッコではなく2倍ダーシ「――」が主に使われていて、
読んでいて引っかかりが少ない。

またリズム感を感じる読みやすい文体なのに、
小説家やルポライターとは違った「客体との距離感」が、
むしろ描かれた光景を脳裏で想起させてくれる。

日本だと新宿・吉祥寺・神保町・豊島園。海外は台北・オアフ・ティフアナ(メキシコ)・ロスアンゼルス・サンフランシスコ・ナイロビ...etcといった街をめぐる旅物語が綴られています。

唯一、時代を感じさせるのは海外渡航前の予防接種の証明書の話題が登場するぐらいでしょうか?
歴史的というか通時的な語り口ではないですし、
2013年でも、こんな光景ってあるなあと思う記述も多く、
なんだか同時代的なものを感じるだけでなく、どこか醒めた視点がむしろ一気に読み終えさせてくれました。

たとえば、昆虫や動物を売っている店での一コマ……

――ほら、ぼうや、絵で見たでしょ、カブトムシですよ。 と話しかけている。なるほど、そのカブトムシも、その母親も、その子供も、みんなすべて本や雑誌のなかでみた絵とそっくりだ。

といった行(くだり)。<138ページ>


ちなみに、私が手に取ったのは晶文社刊ですが、
西江雅之作品集(大巧社刊)にも収録されているようです。

学者さんが書いた書籍ですが、
「アーバンツーリズム」のエトセトラを知ることができる一冊としてもオススメです。

※アーバンツーリスムについて
http://kotobank.jp/word/アーバンツーリズム

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