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2013/05/16

『コレキヨの恋文』:日本の未来は描かれたように展開するのか?

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昨年、出版された本ですが『コレキヨの恋文』を読了。

著者は三橋貴明、執筆協力はさかき漣となっていますが、
このコンビの他の書籍と三橋貴明単独の書籍を見れば、
この本も「三橋貴明=原案」「さかき漣=執筆」と思っておいてよいだろう。
だからといって三橋貴明がゴーストライターに書かせているというわけでなく、
本書で「イイタイコト」は三橋貴明が日頃展開している議論そのもの。

ちなみに、三橋貴明自身は、以前に自民党から参議院選挙の比例区で立候補したこともあり、
本書内では民主党や社民党の議員が、まるでヒール役のような描かれぶり。
そんな党利党略的な部分が見え見えな作品なれど、
登場人物で予言していたかのような描かれ方をしているのが……

元首相で財務大臣の「朝生一郎」。

現政権で言えば、副総理 財務大臣 金融担当大臣でもある麻生太郎そのもの。

この本が出版された当時は、まだ民主党政権だったことを思うと、
今、アベノミクスと称されている戦略を含め、
政権が交代したときのブループリント(青写真)は、
国会議員以上に、彼ら・かの女らの周囲を囲むブレーンによってアイデアが吹き込まれている部分も多分にあるということの証左でしょう。

余談はさておき、この小説で民主党から政権を奪還し総理大臣に就任するのは、
政治の世界は無知ともいえる30代の弁護士資格をもつ霧島さくら子。
現自民党政権も重要な政策課題としている「デフレ脱却」が本書でも一大テーマとなっており、
その指南役が、総理大臣官邸の庭で幻想的に(ここが小説の真骨頂!)に現れる高橋是清。
日銀総裁、内閣総理大臣といった要職のみならず財務大臣に6回も就いていたことは、
私も「コレキヨの恋文」で恥ずかしながら初めて知った。

今日のアベノミクスといわれるものも、そのじつ、第一の矢や第二の矢は、
世界恐慌や昭和恐慌と呼ばれた時代の教訓(高橋是清の政策)を継承するといったもの。
とまれ、その詳細は、興味を持って読む方がおられれば「コレキヨの恋文」で確認してください。

一国の将来を託された内閣総理大臣たるものの評価は、
この本でも高橋是清に「能力や才能よりも施した政策の結果」と言わせているが、
要するに、就任する人にもよるといえども、
内閣総理大臣の判断は周囲の知恵袋次第で如何様にもなるとも解釈できはしまいか。

かつて、政治の世界は「魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈している」などといった表現がよく使われていた。
人に害を与える化け物が政治の世界にはウヨウヨしているという意味だけど、
害を与えるかどうかはさておき、例えば、産業競争力会議と称される場で、
国政選挙で選ばれたわけでもない民間議員とも呼ばれる有識者委員が、
国会議員なみに主義主張を唱えていたりする。
この方々が、どこまで「私利私欲」を離れて会議に臨んでいるかについては疑問符が付く。
そして人選にかんしては、
「人選産業競争力の強化及び国際展開戦略に関し優れた識見を有する者のうちから内閣総理大臣が指名する」ことになっている。

ちなみに、昨今話題になっているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)には諸手を振って賛成する「自民党の知恵袋の一派」とも言える。

そのいっぽうで、もともと自民党は、
2012年末の衆議院選挙のポスターでも「TPP反対!」と堂々と掲げていた。
現状は定かではないが、200名以上の自民党議員が「TPP交渉参加反対」派とも言われていた。
その周囲には、産業競争力会議に選ばれたメンバーとは意見の多くが相容れない「自民党の知恵袋」がいて、
そのなかの一人が『コレキヨの恋文』の著者であると言って過言ではないでしょう。

この本は、今後数年間の理想的政局を政権交代前に小説として著したともとれる内容です。
現時点では方針が明確といえない「第三の矢=成長戦略」が今後どう進んでいくのか? 
TPP参加に反対する立場からの理想がフィクションとして展開されている「コレキヨの恋文」だけど…

ここにフィクションとして描かれているような……

「日本のTPP参加交渉離脱以降、TPPは自然消滅に向かい、元通りの4カ国に戻る」
「アメリカもニュージーランドやオーストラリアからの農産品の輸入拡大を受け入れるのは困難であることから離脱濃厚」
「日本が経済成長路線へ復帰した結果、防衛費が増額され、それに基づきアメリカからの軍需産業の輸入拡大によってアメリカの雇用状況も改善」

といったことが、現実の世界ではどういう結果となるのか?

とまれ、小説としての『コレキヨの恋文』はファンタジック(和製英語!)な政治経済小説。
特に終章「是清からの恋文」は、
霧島さくら子のみならず現代の人々に向けてのメッセージともとれる文章となっており、
一種の涙を誘うような筆致です。
詳しく書いてしまうと読む楽しみがなくなるので興味のある方が本書で読まれることを望みます。

追伸:
アメリカ国内でもTPPに懐疑的な層が増えているそうです。
詳細は以下のYou Tube動画で。
前半は孫崎享氏、後半は山田正彦氏。
山田正彦氏の講演のほうで最近の訪米後の事情を話されています。

http://www.youtube.com/watch?v=qHlmCn1I1Bc


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