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2008/02/04

『曾根崎心中』:日本の美文と無常観。

Sonezaki(●写真)
『曾根崎心中 冥土の飛脚 心中天の綱島』(角川ソフィア文庫)
現代語訳から読むように編集されています。
文楽(人形浄瑠璃)や大衆演劇を見る人には大いに助かる一冊。

この週末は,あらためて『曾根崎心中』を読み直そうと・・・
(●写真)の文庫本を購入。

『源氏物語』は,貴族社会の夢物語みたいで・・・
どうもダラダラとした展開も好きになれない。

『Titanic』では,一筋の涙も出ない・・・
男一人死んでいくDiCaprioが勇敢とするのがアメリカ的?!


『Romeo and Juliet』は『曾根崎心中』に近いかもしれないが・・・
「貴族の悲劇」と「庶民の憐れみ」とは少し違う。

というわけで『曾根崎心中』です。
登場人物の徳兵衛は『Titanic』的価値観からいけば情けない「ヘタレ男」です。
だからこそ,私は『Titanic』よりも『曾根崎心中』です。

1703年に書かれ,人形浄瑠璃も,その年に上演されたもの・・・

「心中」をするカップルが増えたため1723年に禁止され・・・
劇場で復活したのは,じつは1953年(新橋演舞場・歌舞伎)。

そんな前置きはさておき・・・『曾根崎心中』は,
大阪堂島新地天満屋の女郎はつ(21歳)と内本町醤油商平野屋の徳兵衛(25歳)が・・・
曽根崎にある露天神の森(「お初天神」)で情死した実話をもとに書き下ろした短編。

30分もあれば読み終わります。

しかし,文章は,この上なく美文です。
さすがに,簡単に「お涙ちょうだい」的な展開にアレンジされた大衆演劇版「曾根崎心中」は,
それはそれでオリジナルと思っておいたほうがいいでしょう。

よく,テレビその他のマスコミでは・・・
「大阪は<お笑い>と<人情>の街」と紋切り型に言いますが・・・

私は・・・近松門左衛門の世話物をもって・・・
「大阪は<涙>と<憐憫>の街」という一面こそ大事だと言いたい。

そんな余談はさておき・・・日本語のみならず英語にも翻訳されているので,
興味のある方は,ここであれこれ書くより,原作を読んだほうが良いと言っておきます。

が,もともとは人形浄瑠璃用に書かれた話だけに,
ひとつひとつの描写が視覚的で美しい。

たとえば・・・

「露に憔るる夏の蟲。おのが妻戀ひ優しやすしや。

 彼地へ飛つれ、此地へ飛連れ、

 彼地やこち風ひた/\/\、

 羽と羽とを袷の袖、染た模樣を花かとて、

 肩にとまればおのづから、紋に揚羽の超泉寺。」

(現代語訳:<前略>やつれた蝶が己の妻を恋う様子はやさしくもあり.生意気でもある。夫婦の蝶があっちへ飛び,こっちへ飛び,東風にひたひたと羽と羽を合わせ,袷の袖の染め模様を花かと見誤って肩に止まると,自然に揚羽蝶の紋になる。<後略>)

 <<現代語訳は『曾根崎心中 冥土の飛脚 心中天の綱島』(角川ソフィア文庫)>>

 飛んできた蝶蝶のカップルが,着物の花柄を本物と見間違えて,肩に止まったら・・・

 それが自然に揚羽蝶の紋になったって・・・とても粋な一文ですね。

とまれ『曾根崎心中』をとおして,一番,人の世の<無常観>を表している一文は・・・

有名な・・・

 「この世の名残り 夜も名残り

  死ににゆく身をたとふれば

  あだしが原の道の霜

  一足ずつに消えてゆく
  夢の夢こそ あはれなれ

  あれ 数ふればあかつきの
  七つの時が六つなりて
  のこる一つが今生の
  鐘のひびきの聞きおさめ

  寂滅為楽とひびく也」

 現代語訳等の続きは・・・また書きます(あくまで予告。笑)。 


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