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2005/07/24

高価なものが自分にとって旨いのか?

0723前回に書いたお酒の感想から間隔が短い気がしますけど・・・週末ということで,恒例?!の「今週の1本」的な話題を。

 ラーメン,ソバ,ワイン,チーズ,牛肉・・・いろんな分野で「食通」と呼ばれる方々が,時間やお金,ときには生活を度外視しても,それらの魅力にハマって理想を追い求めています。そんな「こだわり」がある人の会話は聞いていても楽しいし,その世界観をもって,他の分野でもいろんな視点を築かれていることと思います。

 こういったブログのみならず,ウェブサイトでも見られるさまざまなレビューを見ていて感心することしきりですが・・・。かといって,そういった方々が推奨し,入手が難しく,五つ星評価...etcで高評価だからといって,自分にとって最高のものかといえば・・・残念ながらそうとは言い切れないのが現実です。味覚に限らず,五感を駆使して楽しむことは・・・よほどマイスターの領域に入らない限り,好みの枝分かれはやむを得ないでしょう。

 まず・・・価格的にもスペック的にも最高峰に近くなればなるほど,いってみれば頂点は限りなく「点」に近いわけですから,その味わいは多かれ少なかれ似通ってくる。ところが,それは誰でも簡単に入手して味わえるわけではありません。でも,本当に良心的な職人の作なら,ハイエンドからローエンドまで,あらゆるクラスのものに,職人さんの「人間性」が味となって出てくると思いますし,ローエンドに近くなればなるほど,良くも悪くも,いろんな制約のなかで工夫が見られると思います。

 その意味で,むしろ,手頃な価格で入手できるものこそ,酒に限らず何でも,じつは職人さんの「人間性」の味わいどころではないかと痛感する今日この頃。ちなみに,この「人間性」の味わいどころこそ,人それぞれ。結局は自分自身に合うか合わないかという意味で「じゃあ,あなたの気持ちはどう?」と問いかけてくるものだと勝手に思っております。

 しかしながら・・・味覚による嗜好っていうのは客観的な評価は難しいですね。たとえば・・・今日話題にしている日本酒ひとつにしても,その日の体調,天候,注がれた器,酒そのものの温度,場所,その場所のメンバー,出された料理・・・等で,ずいぶんと印象がかわってきます。個人的には,管理状態のみならず,けっこう,その場や地域が持ってる空気感で本当に味わいというか,印象が異なるなあと,痛感しています。それと・・・たとえば誰かと楽しいひとときを過ごしていたならば・・・少々味わいが悪かろうが,そんなことは二の次ですからね(笑)。

 そこで,ちょっと皮肉な言い回しになるかもしれませんが・・・あえて少し前の使い古された言葉でいう「エンスー」(enthusiastic<熱心な>)ピープルは,結局のところ,ウンチクを語りたいがためにマスコミで話題になるものを試しに試し,ウンチクを使える人との共通項を増やしつつ,「味覚や嗜好の階級闘争」の偏差値をアップさせることに陥りがちではないか。それは決して悪いことではないと思いますが,けっこう,みなさん,隣の人の意見をチラチラ見るように様子を伺っておられます。

 かくいう自分自身も,酒のことはまるっきり素人でありますが・・・なんだか,いつも購入すると安心して飲める一本が,写真の「篠峯・遊々」(千代酒造・奈良県御所市)。これは無濾過生原酒バージョンで,税抜き2400〜2500円(一升)ですが,火入れでアルコール度数を落としたバージョンなら税抜き2000円ほどの,割と手を出しやすいお酒です。全国どこでも売ってるわけではないですが,かといって入手困難というわけでもありません。

 ちなみに,写真のお酒は「無濾過・生原酒」といいまして,しぼったお酒を「炭素濾過(香味の調整や見た目の透明感を出す)」したり「火入れ殺菌」したり「割り水(アルコ-ル度数の調整)」したりせず,そのまんまを一本一本瓶に詰めるお酒のことです。「成分無調整」といってもいいでしょうか。デリケートなお酒なので,冷蔵庫の保管はもちろんのこと,造りがよくないと日に日に味わいが劣化するものが少なくありません。

 「無濾過・生原酒」の是非はさておき,わりと「無濾過・生原酒」は五臓六腑にドスンと落ちてくる味わいのものが多いですが,この「篠峯・遊々」は,それほど発酵を上げまくっていない「無濾過・生原酒」のわりには,くどさがなく「キレイ」な口当たり(しかし淡麗辛口というわけでもない)。香りも旨みも強い押しはないのに,やさしくいろんな旨みが口中で展開するので,何にでも合う感じです。それほどアルコール感も強くないですし,甘みが最初に口中で広がるというよりは・・・淡いメロンの香りを混ぜた練りきりの和菓子を舌で転がした雰囲気と言っていいでしょうか。その後に,大人めの苦みが喉を通りすぎるという印象。それほど精米しまくってるわけではないので(60〜70%),そういった味わいが軽く後味として余韻を残していく感じです。大吟醸クラスの余韻とは明らかに違います。

 とまれ,たいして酒のことを知らない人間がこういっては蔵元に失礼かもしれませんが,入手困難と言われていたり,いろんなレビューでたくさん話題になる酒のなかにこれを紛れ込ませたら・・・印象度では薄いかもしれません。けれども,口中で感じるいろんな味わいに出過ぎた部分がなく,派手さもない。でも,一口飲めば「ああ○○。安心安心」と,ちゃんと作り手の味わいが伝わってきて「飽きない」。ここの専務さんを一度拝見したことがありますけど,飲むと「ああ,あの笑顔のやさしいお兄ちゃんの目指す世界」といった趣。それと杜氏さんは,「現代の名工」にも選ばれたベテランの方。味わいにしろ知名度にしろ派手さはないけど,安心感があって,どことなく味わいに品の良さがある,自分にとっては「スタンダード酒」です。

 といった調子で書いていますが,これは自分の主観的な部分が大ですので,こちらの感性と合った方には「いい酒」ということになります。あしからず。


(使用米:山田錦/精米歩合:60%(麹)・70%(掛)扁平精米 アルコール分:17.2%/日本酒度:+4/酸度:1.8 酵母:協会7号)

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