« 左手への誘惑:箱根の蔵の「魚々っと」という酒 | トップページ | 花言葉:赤いバラ »

2005/05/15

『人を信じるということ』

nao8-1111240739-15少し以前に読んだ本のレビューを。タイトルだけで,なんだか引きつけられてしまう『人を信じるということ』。じつはこの本,図書館でカバーのデザインにつられて借りました。そのときは風邪気味のなか,半ば頭がボーっとした状態で読んだのですが・・・。頭に残っていることを箇条書きにて。。。

著者の島田裕巳氏はオウム事件の時に話題になった宗教学者であることは多くの人が知っているものと思われます。それはともかく,タイトルそのものが,本文でのさまざまな事例や分析を抜きにして,著者の切実な心情ともいえなくもない内容でした。
古き良き?日本の習慣ともいうべき,日本料理屋や呉服屋と常連の付き合いのような,相手への「おまかせ」する心の持ち方と,日本では近代以降の概念ともいえる「私」や「個人」を軸とした「選択する」心の持ち方との対比するなかで,宗教を軸として
持論を展開しています。そして前者的な心の持ち方を「人を信じるということ」についてのキーポイントとしています。

最終章の締めくくりには・・・

<私たちは,何かを引き受けることによって,人と人とを結びつける絆を得ることができるのではないでしょうか。私は,私だけでこの世界に存在しているわけではありません。私は,他者との関係のなかで,私であることができま
す。人を信じるということは,私が他者と切っても切れない絆で結ばれるということを意味しているのです>

と書かれています。

歌舞伎の勧進帳や、漱石をめぐる近代文学論から宗教的な神仏の選択,新興宗教の存在意義等を例証しながら,現代人の「居場所さがし」へと話が発展します。ところが,漱石をめぐる近代文学論あたりは,大学生の頃の比較文化論の講義と何ら論じていることとかわらず,新鮮さがなくて,ちょっと本文へ食いつきにくかった感も。
下手に宗教の教義や文化論にかんする分析を型どおりに説明してもらうより,やや路頭に迷うかのように本書後半で特に漂う「人を信じられるのか」というトーンこそ,「神や仏への信仰心とは何ぞや」と問う上でも大事な問題なのではないでしょうか。

1953年生まれの著者が抱えるアポリア(難題)は,1970年代生まれあたりの読者とも十分にリンクしそうな,ある意味,まだまだ課題は山積みといった読後感こそ,じつは大事にすべきかなと思った次第です。

しかしながら・・・個人的に晶文社のブックカバーのデザインには好きなものが多いです。

只今のBGM ...... SCAN X : infinity

« 左手への誘惑:箱根の蔵の「魚々っと」という酒 | トップページ | 花言葉:赤いバラ »

コメント

nekkonokoさん,書き込みありがとうございます。
個人的には,宗教と世俗的な倫理観とは分けて考えるべきと思っていますが・・・,自分の価値観を押しつけるのではなく,まずは自分自身はどうなんだ,という問いが大事だと思っています。
拙い記事でしたが,何か心に響くことがあったならば幸いです。

トラックバックさせていただきました。はじめてのことでやり方がよくわかりませんでしたが、この記事を読ませていただいてよかったです。
ありがとうございました。

yasukoさん,書き込みありがとうございます。音楽に文学に・・・関心のフィールドがお広いのですね。本の紹介はときどきするつもりですが,もし読まれたら,感想でもお寄せ下さい。

夏目漱石、と、その対極にあった森鴎外―。高校での現代文の授業を思い出しました。
そして『人を信じるということ』この本にも興味をそそられました。ご紹介、ありがとうございました。久しぶりに、漱石や鴎外も、読み返してみたいです。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/91790/4132477

この記事へのトラックバック一覧です: 『人を信じるということ』:

» 受ける     2005.5.26. [根っこのこ日記]
人とのかかわりの中で、自分を必要としてくれる人がいることは本当にありがたいと思う。  地域では自治会、子ども会、PTAなどの役員、根っこのこのようなサークル的なものではそれをまとめていくキャップからスタッフまで・・・。 色々ないわゆる “役” というものについて欲しいという依頼は地域社会で子どもを育てていたり、何らかのサークル活動をしたりすればおのずと生じてくることである。 しかし役員決めの場ではたいていの場合、ゆずりあったり 逃げたり・・・、と自らがその重責を背負わずに済むものな... [続きを読む]

« 左手への誘惑:箱根の蔵の「魚々っと」という酒 | トップページ | 花言葉:赤いバラ »