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2005/04/27

「無痛文明」という不感症

0427図書館で借りた本ではありますが・・・『無痛文明論』(森岡正博著・トランスビュー・2003年)。あとがきに「私はこの本を書くために生まれてきた」という一文も散見される,450ページ超の紙幅をさいた本。

まず最初にお詫びしておかねばならないことがあります。大著であるからという理由ではなく,雑誌の連載原稿をもとに改稿したり2章分を追加されたとのことですが,むしろアフォリズムとまではいかなくとも,イイタイコトを必要最小限に読ませてもらったほうがいいのでは,と読み始めの数十ページで感じました。よって,ある程度は斜め読みした箇所があることは否めません。

また,この本で展開される「身体の欲望」が「生命のよろこび(力)」を隠蔽していく。言ってみれば「痛みを避けたり痛みを感じる感覚の鈍化」をテクノロジーや資本主義の発展,大衆娯楽が促進してきたという主張にかんしては,大いに賛同していいと思っています。生命や自然の管理や操作(心のケアも含めて),社会や生活の現状維持傾向など,無痛化へと向かう落とし穴にかんする記述は,特に納得できるところ。

ところが・・・結論へと向かうにつれて著者の最もイイタイコトでもある「無痛文明」への対抗策についての展開は・・・なんだか自信と不安があっちいったりこっちいったりして,読者として消化不良の感あり。ただし「無痛文明」を生み出す装置としての制度や理論,例証を抜き書きするように読むのがよいのでは。

そこで自分自身を振り返ってみると,「生き方」を模索することはもちろん大事ですが,「生きる」ことそのものへ実感がなければ,言葉だけが空振りしてしまう。そんな現実を再認識するうえでは,この本を読むことでちょっぴり心に「痛さ」を感じた次第です。その点で,本書は,「無痛文明」とどう向き合うのかについて,もう少し行動なのか,哲学なのか,学問的な知識なのか・・・何が大切であるのか明解に展開していただきたかったが,そういった作業こそ,個々が見つけだすことなのかもしれません。

最近,森岡氏の著作して『感じない男』という新書が話題になっていますが,まだ読んでいません。むしろ,そちらを読んだ方が,より氏の実感に近いところから「無痛文明」を論じてらっしゃるかもしれない。そう思うところです。

いつもは記事の最後に「只今のBGM」を掲げてますが・・・今日は上記の話題に関連して?!大杉栄の一節から・・・

「・・・生の拡充の中に生の至上を見る僕は,この反逆とこの破壊との中にのみ,今日生の至上の美を見る。征服の事実がその頂上に達した今日においては,階調はもはや美ではない。美はただ乱調にある。階調は偽りである。真はただ乱調にある。
 今や生の拡充はただ反逆によってのみ達せられる。新生活の創造,新社会の創造はただ反逆によるのみである」
(「生の拡充」大杉栄)


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ISBN:4480062211:detail >> 「無痛文明論」の著者が満を持して放つ、衝撃のセクシュアリティ論。ロリコン、制服、男の不感症という禁断のテーマに正面から挑んだ問題作。忽ち重版したみたいです。 > 「したがって、次のように正確に言い直さなければならない。すなわち、大事なのは、スカートの中身を隠そうとする意志があるにもかかわらず、スカートの中身が見えそうになっていることである、と。」(17頁) > 「射精についての神話がある。それは、射精はすごく気持ちのよい、至... [続きを読む]

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